専業主婦・パート勤務の離婚

専業主婦やパート勤務の方の離婚の場合、以下の点を必ずチェックしましょう。
(配偶者が専業主婦やパート勤務の場合は、配偶者から以下の請求を受けることを念頭においてください。)

【専業主婦・パート勤務の方の離婚のポイント】

  1. 離婚後の生活設計ができているか
  2. 財産分与額の目途がたっているか
  3. 離婚成立までの生活費(婚姻費用)が確保できているか
  4. 子がいる場合は子の(将来の)学費等が確保できているか
  5. 年金分割(合意分割)ができているか

1.離婚後の生活設計ができているか

①離婚後の生活設計を数字(金額)で具体的にしてみてください

専業主婦・パート勤務の方の場合、配偶者(夫)の収入で生計を立てることが多いため、離婚で配偶者の収入が入らなくなると、離婚前より生活レベルが落ち厳しい状況に陥ることが少なくありません。離婚したいけれど生活が不安、というのは多くの専業主婦やパート勤務の方が悩むポイントです。
離婚を考える場合は、必ず、離婚後の生活設計を具体的にしてみてください。
例えば、賃貸の方は賃料(持ち家の方は固定資産税や管理費)、電気ガス水道などの光熱費、携帯代金、保険料、食費、日用品費、お子様がいる場合はお子様の学費、塾代、部活動費などがいくらかかるのか、いくら自分で稼げばよいのか(又は後述するように養育費としていくらもらえればよいか)を計算してみてください。この計算が合わなければ、すぐに離婚に踏み切るのは危険といえます。

②生活設計は「離婚を切り出す前」に検討すべきです

離婚の生活設計は、配偶者に離婚を切り出す前にすべきでしょう。一旦離婚を切り出したら後戻りはできないと思っていただいた方がよいと思います(場合によっては復縁される方もいますが、多くの場合、不仲になってしまい同居生活を続けても息苦しい生活になってしまいます)。離婚を切り出すと、相手方は防御的になってしまい、財産を隠したり、生活費を以前と同じようには渡してくれなくなる恐れがありますので注意が必要です。

③まずは「どこに住むか」を決めてください

離婚後の生活設計としてまず始めに決めるべきことは、どこに住むかです。すなわち、今住んでいる家でなければいけないのか、それとも自宅を出て他の場所でも構わないのかです。今住んでいる家に住み続けられれば転居の手間もかかりませんし楽ですが、配偶者名義であったり、住宅ローンが残っていると、そのまま住み続けることは難しい場合が多いです(どうしても自宅に住み続けたい、自宅を財産分与してほしいと希望される場合は、相手方に離婚を切り出す前に、弁護士に相談されることをお勧めします)。
可能であれば、一時的でもよいので、実家に戻ることができると離婚後の生活を立て直しやすくなりますし、離婚交渉をいつ始めるかの選択肢も広がります。実家の援助が得られるかどうかは大きなポイントです。実家の援助が得られない場合には、転居のための初期費用(転居先の敷金礼金、数か月分の賃料)は貯めておきたいところです。

④いつ別居するか

離婚後の生活設計の目途ができた後は、離婚前に別居に踏み切るか、別居するとしていつ別居するかです。自分が家を出るのか、配偶者が出ていくのかですが、配偶者を無理やり追い出すことは難しいため、多くは自分が家を出ることを想定することになるでしょう。お子様がいる場合は、学校に影響がないように学期の間の休み中に転居するなどの配慮も必要かもしれません(但し、心身への具体的な危険がある場合は至急転居する必要がある場合もあります)。
別居に踏み切る場合は、新しい転居先の確保と最低限の荷物の搬出が必要です(場合により引っ越し業者の手配も必要になります)。配偶者が不在にする時間帯に転居手続きを取られる方もいらっしゃいます。

2.財産分与額の目途がたっているか

離婚する場合、①子がいる場合は養育費、②相手方が不貞や暴力等離婚に至った原因を作った場合は慰謝料が問題となりますが、一番大事なのは③財産分与です。
財産分与は、今後の生活を支える大きな財産ですので、必ず確保する必要があります。そして、大事なのは、取得できる見込み額をなるべく正確に把握することです。離婚前に財産分与の見込み額がわかれば、離婚後の生活設計がよりしやすくなりますし、安心して離婚に踏み切ることができます。
しかし、財産分与の計算はそう簡単ではありません。当職の感覚ですと、10年前の財産分与と最近の財産分与は全く異なります。以前は、「別居時の財産を足して2で割る」だけで済んだのですが、最近の財産分与は、特有財産の問題が必ず争点となりますし、住宅ローンと持分及び評価額からの計算、金融資産の評価など、かなり厳密に積み上げていくことが多いです。また、基準日以後に入金する金員の組み入れや、財産分与と婚姻費用(養育費)の切り分けも必要です。
財産分与額は婚姻期間が長ければ長いほど金額も大きくなる傾向であることから、離婚を検討されている方は必ず一度は弁護士に相談していただき、財産分与額の見込みやその確保方法について確認された方がよいでしょう。
なお、相手方配偶者が財産を隠している場合は、最終的には弁護士会照会や調査嘱託等の手続きで調査することになりますが、できれば、同居中にどの金融機関(及び保険会社)から郵送物が来るかだけでも確認しておくとよいでしょう。

3.離婚成立までの生活費(婚姻費用)が確保できているか

離婚を切り出してから実際に離婚が成立するまでの期間ですが、一概には言えませんが、早くても数か月はかかることが普通です。場合によっては数年かかることも珍しくありません。お子様の親権や財産分与額で争いが生じると長期化することが多いでしょう(数年単位でかかることも少なくありません)。
したがって、離婚を切り出してから実際に離婚が成立するまでの間の生活費をどう確保するかは重要なポイントです。ご自身の就業により収入を得ることはもちろん必要ですが、お子様が小さかったりするとフルタイムで十分な収入を得ることは現実的には難しいところです。生活費を確保するためには、早めに「婚姻費用分担請求」を行うことが必要です。婚姻費用は、お子様がいてもいなくても、離婚成立日までは、収入の高い相手方に請求することができます。実務上、婚姻費用の起算月は婚姻費用分担調停申立て日の属する月ですので、特に別居した場合はすぐに家庭裁判所に対して婚姻費用分担調停を申したてることを検討してください。

婚姻費用額は、お互いの収入によってある程度決まってきます。家庭裁判所のHPに算定表がありますので参考にしてください(子の有無や年齢によりいくつか表があります)。

4.子がいる場合は子の(将来の)学費等が確保できているか

お子様がいる場合、お子様の学費の心配をされる方が多いです。元配偶者が全額学費を負担してくれればよいですが、残念ながら必ずしもそうではありません。近年は子の学費の負担割合が大きくなっており、特に進学時の負担(受験費用、制服代、教材費等)、塾代の負担は大きいところです。
まずは離婚成立までは婚姻費用で、離婚後は養育費の合意によりお子様の学費等の確保を行い、安心して子を養育できる環境づくりをしたいところです(但し、学費等は月額の婚姻費用及び養育費に原則的に組み込まれているため、特別費として外出しして確保する必要があります)。

5.年金分割(合意分割)ができているか

専業主婦や扶養の範囲内でパート勤務をしている方の場合、離婚に伴う年金分割は忘れずにしていただきたいと思います。3号分割制度もありますが、必ず合意分割を行って将来に備えてください。
年金分割(合意分割)の方法は以下の通りです。

①年金分割のための情報通知書を取得する

所定の「年金分割のための情報提供請求書」を作成し、以下の各機関に申請して「年金分割のための情報通知書」を取得します。

  • 国家公務員の場合:各省庁の国家公務員共済組合
  • 地方公務員の場合:各地方公務員共済組合
  • 民間会社員の場合:全国の最寄り年金事務所

50歳以上で老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている場合は、予定受領年金額の計算書がもらえます。

配偶者の一方のみから請求した場合、離婚前であれば、請求者のみに交付されます(離婚後の請求は双方に配布)。

(参考)

②公正証書、調停調書、審判書又は判決書の作成

上記情報通知書を基に、分割割合等を合意します(公正証書の場合)。合意が成立しない場合又は調停・審判・訴訟の場合は、裁判所作成の書面によります。

実務では、ほぼ全件、50%の割合での書面となります(当事務所が扱った案件で、過去に1回だけ50%ではなく4:6となったことがありますが非常にレアケースです)。

③年金事務所への提出

原則として離婚した翌日から2年以内に、最寄りの年金事務所へ②の書面を提出します(提出が完了しないと年金分割手続きができませんのでご注意ください)。

(参考)

この記事を書いた人 弁護士 大澤美穂子

2005 年 10 月弁護士登録(第二東京弁護士会所属)
クラース東京法律事務所代表弁護士
企業法務、一般民事、離婚などの家事事件、高齢者問題(成年後見、遺言、相続)など広く取り扱い、クライアントのニーズに合った最適な解決方法を目指している。

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