子が自立するまで待つ離婚
ご相談を受ける中で時々お聞きするのが、「子が小さいので、大きくなるまで離婚を待ちたい」「子が大学生になったときに離婚する話し合いをしたい」などのご相談です。
子が自立するまで待つ離婚の場合、どのような問題や傾向があるのでしょうか。
- 将来の離婚合意は基本的には無効である
- 離婚を先送りにする場合、財産分与額が大きくなる場合が多い
- 離婚したときよりも学費を出してもらいやすい
- 子への影響を考えて一番良い選択肢と言えるかどうか
目次
1.将来の離婚合意は基本的には無効である
将来のある一定時期に、離婚をすることを合意しておけばその時に離婚できる、と思っている方が少なくありません。
しかし、これは誤りです。離婚の成立要件として、有効な離婚届の提出等形式面の充足と、主観的に離婚する意思が合致することが必要です。したがって、一度は離婚を合意したけれど、いざその時になったら離婚する気がなくなった、という場合は、離婚意思が合致していませんので離婚は有効に成立しません。一から離婚の条件を詰め直す必要があります。
法的には上記の通りですが、一度合意しておけば、事実上その通りにしやすいということはあるかもしれません。但し気が変わって争ってくる場合のリスクは十分備えておくべきでしょう。
2.離婚を先送りにする場合、財産分与額が大きくなる場合が多い
離婚を将来に先送りすることで、二人で積み上げた資産が増えることから、財産分与対象財産が増えて財産分与額が多くなる傾向があります。しかし、現在財産が多い方は、逆に財産を食いつぶしてしまい財産分与額が少なくなってしまう、というリスクもありますので、絶対に財産分与額が大きくなるということではありません。
例えば、既に夫婦仲が悪化しており配偶者の財産状況が全く分からない場合などは要注意です。
3.離婚したときよりも学費を出してもらいやすい
離婚した後、子と別居している親は子の状況があまりわからないため、学費を支払うことを渋る場合が少なくありません。他方、離婚を先送りにして夫婦で同居していれば、子の希望や状況がわかりますので、学費や塾代などを支払いやすい面はあります。
しかし、これも絶対ではなく、既に同居中から夫婦仲が悪かったり、子に対して冷淡な親の場合は学費を負担しない場合もありますので、その時は婚姻費用分担調停等を提起して対応することが必要です。
4.子への影響を考えて一番良い選択肢と言えるかどうか
お子様がいる場合に一番考えるべきことは、離婚を先送りにすることでお子様に対してどのような影響が生ずるかでしょう。確かに金銭面ではよいかもしれないけれど、お子様に対して暴力や暴言などがある場合は、まずはお子様の心身の安全を図ることが必要です。可能であれば別居も一つの選択肢として検討すべきでしょう。もっとも、そこまででなければ、やはり実際の生活も大事ですので、なんとか同居してお子様が自立するまでやり過ごす、ということもあるかもしれません。